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2003年平和アピール

日本聖公会東京教区 正義と平和協議会

2003年8月1日

正義と平和協議会 議長 香山洋人


主の平和が皆さんとともに

今年も敗戦から五十八年目の八月十五日をむかえようとしています。日本国民はもちろんのこと、アジア太平洋地域に多大な犠牲をもたらせた戦争の反省に立ち、日本は軍備を放棄し平和の道を選択しました。戦後の日本社会は、憲法を拠りどころとし、民主主義の確立と、アジアの人々との和解に基づく世界平和への貢献を目標として努力してきたはずでした。しかし、今日、日本政府はアメリカの一国覇権主義に追随しながら「新ガイドライン法」、「イラク新法」、「イラク特措法」を制定するなど、多大な犠牲と半世紀にもわたる努力を踏みにじるかたちで平和憲法を骨抜きにし、アフガニスタンやイラクの人々への武力行使に荷担し、「ゲリラ戦状態」といわれるイラクに自衛隊員を送ろうとしています。これはアジア太平洋戦争のすべての犠牲者、今もその被害を受け続けている人々に対する背信です。私たちはこのように歴史を逆行させることによって、未来を担う世代に負いきれないくびきを課すことになることを自覚しなければなりません。

自民党の麻生太郎政調会長は、五月三十一日の講演会で、「朝鮮人の創氏改名は朝鮮人が望んだこと」、「ハングルは日本が教えた」、などと述べました。また、七月十三日には、自民党の元総務庁長官江藤隆美氏が、「南京大虐殺(の死者)が三十万人なんてでっち上げのうそっぱち」、「新宿の歌舞伎町は今、第三国人が支配している無法地帯。そういうのが犯罪を犯している」などと述べました。江藤氏は総務庁長官時代にも「植民地時代、日本は韓国によいこともした」と発言しています。言うまでもなく、これらは事実誤認であるばかりか、中国、韓国、北朝鮮の人々や、日本による植民地支配の犠牲者たちを著しく侮辱する言葉、外国人労働者に対する差別を助長、扇動するものです。

こうした暴言は、六月二七日の自民党の大田誠一代議士による「集団レイプするくらい元気」発言や、七月二日の森喜朗元首相による「子どもを産まない女性に年金は不要」などの常軌を逸した暴言とともに、日本の政治家たちの非常識さ、倫理性の崩壊、アジアや女性に対する明らかな差別と偏見、悪意の存在を露呈するものです。

今、平和憲法を無力化し、戦後の民主主義の努力を嘲笑する力が政治指導者たちの中に働いています。正しい歴史認識と倫理観を喪失した政治家たちの判断が、日本を再び戦争加害国、侵略国へと導き、国内外の人々に災いをもたらすのではないかと危惧せざるをえません。

このような人々が国会議員であり続けられる現状に対し、すべての選挙民は責任を問われています。私たちキリスト者は、自らの良心と信仰に照らして善悪を識別し、自らの行動を律する必要があります。いまこの時にこそ、「知る力と見抜く力とを身に付けて、あなた方の愛がますます豊になり、ほんとうに重要なことを見分けられるように」(フィリピ書1章9節)との使徒の祈りを想起しましょう。

特に、私たち日本のキリスト者は悔い改めと赦しへの希望に従って、アジア、特に韓国の教会とのあいだに信頼関係を築き上げようと努力してきました。今後ますます、私たちは悔い改めの結ぶ実を携えてアジアの隣人たちと共有可能な歴史観を構築し、アジア蔑視の風潮を克服するために祈り、行動しなければなりません。

東京教区正義と平和協議会は、東京教区の各教会、信徒、教役者の皆さん、ならびに他教区や修道会の皆さん、そしてキリストにあるすべての姉妹兄弟の皆さんに対し、次のことがらを訴えます。

  1. アジアの人々と共有可能な歴史認識を学ぶための機会を設けましょう。
  2. 日本による植民地支配の犠牲者、侵略戦争の犠牲者への償いと人権の回復の働きに参加しましょう。
  3. 自衛隊のイラク派遣を阻止するために行動しましょう。
  4. 「平和の器」としての教会の働きを強めるために、祈り、学び、行動しましょう。

祈りの課題として

  1. 8月17日の主日に、侵略戦争を反省し、戦争犠牲者を覚え、日本とアジア諸国の和解の実現のためにお祈り下さい。
  2. 世界平和と正義の実現のため、特に、イラク、パレスチナ、その他の紛争地域に一日も早く正義と平和が実現するようにお祈り下さい。

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