NSKK 日本聖公会 東京教区
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むらさきの季節

主教 植田仁太郎

 手元にある、教会のお祭りの日や各シーズンを色で区分した、文字どおり教会(用の)カレンダーによると、三月はほとんどむらさき一色である。各シーズンの色分けは、勝手にこのシーズンはこの色にしようと便宜的に付けられたのではない。教会内の聖卓に用いる布や司祭が身に付けるストールの色も、すべて伝統的に季節ごとに決められている。
 三月がむらさき一色なのは、「大斎」と呼ばれる、ざんげと禁欲の季節とされているからである。むらさきは罪のざんげと新たなものへの期待を示すという。イエス・キリストが四十日間荒野で断食されたという故事にならっている。
 日本の社会でも、三月は、いわゆる年度末で、学校生活や社会生活の区切りの季節で、人、それぞれの人生の中で、四月からの新たな展開を準備し期待する月でもある。私たち信仰者の四月の復活祭の喜びに備える、その前の、ざんげと禁欲の季節に、やや呼応する季節であるかも知れない。
 ただし、モノがあふれ、倫理・道徳上のタブー(禁忌=してはならないこと)が無くなってしまったような現代では、禁欲とざんげほど時代遅れの行動は無いかも知れない。みずからの意志で、欲望を規制し、みずからの悪業に目を向ける――これほど不人気な呼びかけは無いだろう。しかし、それをみずからに課すことの、やがてもたらされる実りこそは、古今東西の人間の知恵と信仰が、ずっと訴え続けている真実であろう。


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