主教 植田仁太郎
今年は、五月の最後の日曜日が「聖霊降臨日」と呼ばれる、教会にとって、大切なお祭りの日です。一般的に、この日が教会が誕生した日とされています。イエス・キリストの死からの復活を体験した人々に「聖霊」と言われる特別な力が与えられ、教会という共同体が形成されたと言います。 史実は、ある一日にそのことが突如として起ったのではなく、確かに人々に不思議な力が与えられたでしょうけれども、何年かのうちに、各地で信徒のグループが次々に生まれていったのでしょう。そのあたりの歴史は、いくら調べても、まだ良くわかりません。イエス・キリストの十字架上の死ののち、百年も経ないうちに、ほぼ地中海世界全域に教会が生まれていたという事実は、本当に不思議です。聖霊の力と言う他ないのでしょう。 その各地に生まれた教会は、信仰の在り方やそれに基く倫理や、礼拝の仕方は、余り統一性が無くかなり多様でした。それを表す多様な文書が残されています。その多様な文書が約三百年かけて段々と分別され、現在「聖書」として一冊にまとめられたものと「そうでないもの」という二種類に判定されてしまいました。その過程も、本当に不思議です。一群の文書は「聖なる」「書」とされ、その他のものは、異端や偽典とされてしまいました。それ以降、教会は聖書の教え伝えるところをみずからの規範としてきています。聖書が生まれたのも、教会の生まれたのも、まさに数々のミステリーに包まれています。私たちは、それを聖霊の働きと呼んでいます。