夏の暑さとヨナの物語
主教 植田仁太郎
いよいよ暑さの厳しい夏を迎えます。暑さ・寒さについて、聖書は特別に関心を向けてはいないようです。多分それは、聖書の生まれた、あのパレスチナの地の気候感覚を反映しているのでしょう。また山の頂の町か、緑したたる平原か、死海に連なる乾燥地かで、ずい分事情が違うでしょう。 「暑さ」で思い出すのは、旧約聖書ヨナの物語です。ヨナは神さまの呼び出しに逆らって、ニネベの町に悔改を求める役を放棄して逃げ出します。しかし数奇な経験の後、結局ニネベに赴きます。神様は、ニネベを罰することをせず、その悔改の姿を認めました。ヨナはそれが大いに不満でした。「私にさんざん苦労させて、神からの大役を果たしたのに、結局、みんな赦してしまうんですか!」というのが、ヨナの不満です。ふてくされて原野に座り込んでしまいます。それを見た神さまは、ヨナを憐れんで、「暑さ」をしのぐとうごまの木を生やさせて、日陰を作ってあげました。「とうごまの木は伸びてヨナよりも丈が高くなり、頭の上に影をつくったので、ヨナの不満は消え、このとうごまの木を大いに喜んだ」(ヨナ書4の6)とあります。 しかし、翌日、神さまは、虫を送って木を枯らしてしまい、さらに熱風を送ってヨナを困らせます。そして、こうヨナを諭します。日陰があるかないか、そんなささいなことで一喜一憂するのか。私、神は、とうごまよりはるかに大切な、人間のいのちに気を配っているのだから、あらゆる人のいのちを出来るだけ支えたい、ということを知って欲しいのだと。