1 5 0 年 の 歴 史
主教 植田仁太郎
イギリス国教会の流れをくむ、私たちの日本聖公会という教会は、今年、宣教開始(最初の宣教師の日本上陸)から150年目を迎えた。つい先日、記念の礼拝を、聖職・信徒2500人以上が集まって、ささげることができた 16世紀にカトリックの宣教師たちによって伝えられ、一度はこの国に根付いたかに見えた、教会が、迫害と鎖国の歴史の中で立ち消え、ようやく、再び宣教師たちの努力によって、存在することになった。遠くパレスチナと地中海世界で生まれ、ヨーロッパ、ロシア、アメリカなどで成長することになった、ひとつの“精神世界”とも言える宗教が、この地にもたらされ、「信徒」である私たちが、その精神世界に生きるようになったということは、どんなに私たちが少数であるにせよ、ひとつの奇跡のように思えてならない。 そして、キリスト教という精神世界が、この国の社会にもたらしたものは、信徒の数こそ未だに大きなものではないが、決して無視できないものであろう。端的に言って、キリスト教は、この国の教育と社会福祉の分野で、パイオニアであった事実は消すことができない、 同時に、その精神世界は、時代の限界も反映していた。植民地主義や、軍隊による他民族への暴力に、絶対的に反対する基盤を持つことができなかった。 150年の歴史を思い返すとき、本来、私たちの獲得した精神世界から、生み出すべきであった価値や、またそれに基づく行動が、できなかったと思われることのみ、多かったと思わざるを得ない。これからは、その精神世界から新たな価値と視点を生み出す努力をしてゆきたいと思う。