新 年 礼 拝 説 教 使命を共有し、互いに支え合う教会を目指して
主教 アンデレ 大畑 喜道 |
新たな年を迎え、主の祝福が皆様の上にありますように祈ります。 今日選ばれた福音書は、弟子の召し出しの物語です。神に召し出されたものは網を洗って準備をしていました。漁に出ることと、準備をすることはなかなか目に見える成果もなく、骨の折れる作業です。しかししっかりと準備をしなければ漁に出ることはできません。きちんと呼びかけに応えられるような準備をしているかどうかが試されている時期でもあるかと考えます。神の召しに応えていくために、私たちは何をしていけばよいのか、第一に考えなければならないのは、神は何を求めておられるかということです。そのために私たちは日々、神のみ言葉に向き合わなければなりません。そして向き合っただけでなく、そして日々み言葉によって励まされて、自分を変えていく決断をしていかなければなりません。私たちは弱い存在です。しかし私たちには信仰の仲間がおります。互いに支えあいながら、主のみ言葉を噛みしめ、礼拝生活を大切にしてまいりたいと考えます。主教に按手されて以来、世界中の教会から様々なニュースが飛び込んできます。様々な方々が東京教区にいらっしゃいます。多くの友に出合う時、生きることに本当に困難を覚えながらも、必死に神の宣教のために生きようとしている仲間が世界中にいるということを実感します。あらためて言うまでもなく教会は私の教会ではなく、世界大に広がる大きな共同体です。そんな大きな広がりの中で、私たちは神に生かされている、恵みを与えられている、それをしっかりと受け止めていくことが私たちがまず大切にしていかなければならないことでしょう。そのために一致団結していくことの大切さを痛感しています。あの人が嫌い、この人が邪魔というような仲良しグループを形成していくようなことは慎まなければならないことです。使命を共有する仲間として互いに支えあう教会共同体を目指してまいりましょう。 海外との関係でいえば、今年は日韓の両聖公会の交流が始まってから30年の年で釜山(プサン)教区成立40周年になります。東京教区は隣国との相互依存と相互責任を果たすべく、東京と釜山との間で始められたBTプロジェクトを管区の交流よりも早く始めています。もう一度、大韓聖公会とのかかわりを再確認し次の世代につなげていければと願っています。 2011年3月に発生した東日本大震災は、現在も尚、わたしたちにとっての現実的な課題が残っています。この震災復興の働きのために皆様方の祈りと支えによって大きな募金をお捧げすることができましたことは本当に感謝です。しかしこれで終わりではありません。一応の区切りは付けましたが、今後も私たちのできることをしっかりと続けてまいりたいと考えています。東京には今なお、原発の事故によって、故郷を奪われて、いつ戻ることができるかわからない状態でいる人々がたくさんいます。東北教区を中心とした「大事に東北」ともう少し広がりを持たせて、私たちの生活の質の変革も含めた「原発問題」への取り組みに積極的に参与してまいりましょう。 さらに東京教区主教として、新たな年を迎えるに当たって、これまでの在任期間を思い、来るべき新たな一年を考えると、多様な課題に直面していることは当然のことですが、その課題の重さに身の引き締まる思いがいたします。しかし幸いなことに、去る11月の定期教区会において具体策を皆さんとともに教区のビジョンやアクションや方策を考え実行していこうとするために新しいプロジェクトチームが立てられました。昨年は財政委員会によって今後のシュミレーションを信徒懇談会の場においても、教役者会においても分かち合いました。現実の把握も大切ですが、神の宣教の器として成長していくために手をこまねいていたり、だれか任せにしていたのではいけません。互いに近隣の教会と手を取り合うことの大切さ、そして何よりも誰かがやってくれるのを待つというよりも、自分も福音宣教のためにめされているものだという自覚を強く持っていただきたいと願います。今年は各教会におきましても、自分たちの歴史や伝統をしっかりと踏まえたうえで、今、教区として何をしていく必要があるのか、そのために自分たちは何かできるのかを明確にしていただきたいと考えます。聖職者が不足していることを悲観して立ち止まってしまうのではなく、そこにも大きな恵みが与えられていることをしっかりと受け止めてまいりましょう。今後も数教会が協働で、また、支えあって、聖書研究会などの働きを実施していくこと、礼拝の共有などを進めていくことで、自分だけの教会という枠組みを外していきましょう。変化し、また新しいものを作っていくことは大変な作業です。しかし私たちには信仰が与えられています。教区の成立の時に、関東大震災が起こって、その時に、マキム主教が本国に、「すべてがなくなった。しかし信仰が残った」と誇りをもって打電した伝統が東京教区の伝統です。この伝統をもう一度思い返していただきたいと考えます。私たちはこれから次の世代の人々に対して、「あの時の東京教区は素晴らしかった。どんな困難があっても一致し、信仰共同体とし神の働きのために邁進していたね。先輩たちに感謝します」と言われるように、歴史に残るような行動を起こしましょう。先輩聖職の皆さんの牧会経験、専門的な知識、経験、神学的な素養、また信徒お一人お一人の信仰生活の積み重ねは東京教区の極めて大きな財産です。与えられた財産をしまいこむのではなく、神がなさろうとしていることの実現のために積極的に活用してまいりましょう。 過渡期は一時的な混乱が生じます。しかし方向をしっかりと見据えていれば不安になることはありません。先頭にたっているイエスを見つめ続けましょう。新しいプロジェクトの方々と共に、教区会においてビジョンの策定、方向性を教区に言葉化して提示できればと考えています。教区再編成の委員会ができたからすべてがうまくいくということではありません。大きな混乱も起こる可能性があります。しかしまず聖職団も一致し霊的な生活の向上を努めてまいりたいと考えています。昨年は主教座聖堂において、信徒連続講座を開催していただきましたが、今年も引き続き、学びの機会や霊的成長の場を提供していきたいと準備しています。互いに責任を明確にしていくことが大変に重要な課題です。私たち聖職者たちの協働的な働き、ことに神学研究、牧会訓練などの、聖職者にとっての生涯学習の必要性を再度申し上げたいと思います。
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