はじめに
毎年の東京教区教役者研修会では、教役者自身の司牧、礼拝、説教などに関するテーマが中心でしたが、昨年度(一九九九年)からは、葬送儀礼についてキリスト教以外の諸宗教から勉強しようということになりました。
『生と死』のテーマは、キリスト教に限らず、あらゆる宗教が取り組んでいる共通の根本的課題です。従来はそれぞれの宗教、宗派が独自に取り組んできましたが、最近はできる限りお互いの協力によって取り組んでいかなければならない課題であることが自覚されています。一つの宗教で取り組みにはあまりにも重い宗教的課題のように思われます。
聖職養成委員会ではそのような思いから、死と葬儀礼拝について、当分キリスト教以外の宗教から学ぼうということになり、今回は最初の試みとして、浄土真宗から本願寺派梅上山光明寺の住職石上和啓先生、また築地本願寺に事務所を置く「東京ビハーラ」でターミナルケアーの働きに取り組んでおられる田久保園子先生をお呼びして、お話を伺うことになりました。理論面だけではなく、儀礼面、また実践面から感銘深いお話を賜り、改めて浄土真宗の教えの深さに気づかされると同時に、独自の伝統の中での理解がいかに狭く限られたものであるかを痛感致しました。お二人の先生は、率直にまた親しくお話をしてくださり、愉快な交流と対話の時を持つことができました。
この小冊子はこのお二人の先生の講演を纏めたものです。石上住職、田久保先生に心から感謝しつつ「生と死」の問題に関心を持つ兄弟姉妹の学習資料として利用されることをお勧めします。